TCFD提言への対応
TCFD提言に基づく開示
気候変動に対する移行計画
USSグループは、気候変動を緩和するための移行計画(ロードマップ)を策定し、取締役会にて審議・決議して2023年6月より運用を開始いたしました。ここで示す移行計画は、USSグループの取り組みのサマリーであり、関連する詳細な内容は「TCFDフレームワークに基づく情報開示」をご参照ください。
項目 | 内容 |
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目標 | USSの気候変動の目標は、2031年3月期のGHG排出量削減目標を、Scope1とScope2の合計で2022年3月期比で42%削減、Scope3で25%削減としており、国際イニシアチブであるSBTの認定を取得しております。 |
Scope1と Scope2の 排出量削減 |
USSグループが直接排出するGHG排出量の削減には、①省エネの推進、②再生可能エネルギーの活用の2つのアプローチを取ることが必要となります。 再生可能エネルギーは、新たな再生可能エネルギー電源を世の中に追加し増やしていくことで、社会の脱炭素化に貢献するという観点から、オンサイトの太陽光発電導入を推進しています。具体的には、オークション会場の屋根にオンサイトPPA方式の太陽光発電設備を設置する方式を採用し、名古屋会場およびR名古屋会場で稼働を開始しております。今後、他のオークション会場にも積極的に太陽光発電設備の導入を進めてまいります。 |
Scope3の 排出量削減 |
USSグループのバリューチェーンGHG排出量の約95%がScope3であり、削減にはUSSグループ外部の多くのステークホルダーの協力が必要となります。 USSグループのScope3では、「GHGプロトコル」で定めた15のカテゴリーのうち、販売した製品の使用に伴う排出であるカテゴリー11が最も多く約50%を占めています。購入した製品、サービスに伴う排出であるカテゴリー1も約23%と大きな割合となっていますので、これらのカテゴリーを重点的に削減してまいります。 Scope3の削減は、USSグループだけではなく社会全体の課題でもあることから、顧客やサプライヤーとのエンゲージメントを重視します。一部のカテゴリーにて、サプライヤーからの排出量データの収集を開始しており、課題を共有しながら啓蒙活動やエンゲージメントキャンペーンの実施を進めてまいります。 |
今後 | USSグループの移行計画の中核をなすロードマップについては、最新の社内外の環境変化を見直し、必要に応じて更新することで、計画の精度を高めてまいります。 また、移行計画に対する進捗状況を毎年取締役会に報告することで、取締役会より適切な監督を受ける体制といたします。 |
◆目標の達成に向けた移行計画(ロードマップ)
TCFDフレームワークに基づく情報開示
基本的な考え方
USSグループは、地球温暖化を抑制して、自社グループの気候変動によるリスクの低減と、人やその他の生物が生息できる環境を守り持続可能な低炭素社会を形成していくため、エネルギー消費を抑え温室効果ガスの排出が少ないオークション運営をしていくことが、大きな社会的使命と考え、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めています。
気候変動に関わる主な取り組み
年度 | 取り組み内容 |
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2021 | CDPアンケートへの回答を開始 |
2022 | TCFDフレームワークの推奨開示項目に基いた開示を開始 |
2023 | 移行計画をTCFD開示に追加 |
TCFD提言対応の全体像
項目 | 内容 |
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ガバナンス |
取締役会の監督体制
取締役会は、気候変動に関するリスクと機会について少なくとも年1回以上、代表取締役社長より報告を受け、課題への取り組みや設定した目標をモニタリングし、監督します。さらに、経営戦略、経営計画、年間予算、収益目標等の重要な事項については、必要に応じて気候変動のリスクと機会を検討したうえで意思決定がされています。 役員報酬の評価指数に「ESG外部評価」を新設2022年6月21日開催の株主総会において役員報酬制度を改定し、株式報酬の業績連動指標の1つに「ESG外部評価機関による格付(MSCI ESGレーティングおよびCDP気候変動スコア)」を採用しました。 気候変動に関する統括者気候変動に関する事項は、代表取締役社長が統括します。代表取締役社長は、気候変動が事業に与える影響の評価、適応していくための管理などを統括しています。 |
戦略 |
気候関連のリスク・機会の特定と評価
USSは、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でリスク・機会を特定し、複数のシナリオを設定して評価を実施しました。 シナリオ分析 |
リスク管理 |
気候変動のリスクと機会を特定し評価する仕組み
気候変動に関する事項を統括する代表取締役社長は、気候変動の影響について、社内の関係部署とグループ会社の協力を仰ぎながらリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行います。リスクの評価については、検討した対応方法とともに、少なくとも年1回以上、また必要に応じて取締役会に報告されます。取締役会は、リスク管理の状況と対応を含めた気候変動に関する事項について、代表取締役社長より報告を受け、課題への取り組みや設定した目標を監督します。 気候変動のリスクを管理する仕組み気候変動に関する事項を統括する代表取締役社長は、気候変動の影響を特定・評価するプロセス、特定した影響を管理する仕組み、組織全体のリスク管理の中に統合する仕組みを含め、気候変動に関する企画・立案、管理を行い、取締役会に報告・提言するとともに、全社的な気候変動への対応を推進します。また、特定した気候変動の影響と対応について、少なくとも年1回以上、また必要に応じて取締役会へ報告・提言を行うことで、気候変動の影響を全社リスクに統合する役割を担っています。 |
指標と目標 |
USSグループでは、気候関連リスク・機会の管理に用いる目標として、SBT基準に相当するCO₂排出量の削減目標を設定しました。 この目標を達成するため、オンサイトの太陽光発電設備の推進やCO₂フリー電気への切り替えによるGHG排出量の削減に取組んでいます。 CO₂排出量削減目標 (基準年: 2022年3月期)※SBTイニシアチブによる認定を2023年10月に取得済み <Scope1・2合計排出量>2031年3月期までに42%削減 ※削減目標に対する基準年を2022年3月期に変更しております。 |
シナリオ分析の概要
USSは、当社の事業およびステークホルダーにとって重要となる可能性のある気候変動リスク・機会を特定し、複数の気候変動に関するシナリオ群を参照しながら、当社の「1.5℃シナリオ」と「現行推移シナリオ」を策定しました。さらに、シナリオ群の根拠データ(パラメータ)と社内外の情報に基づき、気候変動リスク・機会による事業インパクトと財務影響度を評価しております。
(注) 対象範囲:オートオークション事業(サプライチェーン全体をカバー)
(注) 対象期間:現在から2050年まで
(注) 参照シナリオ群:下図をご参照ください
1.5℃シナリオ | 現行推移シナリオ | |
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シナリオの概要 |
①政策・法規制の強化
EV販売比率(乗用車)の急激な上昇 |
①世界的なEV普及の遅れ
全世界のEV販売比率(乗用車)
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参照シナリオ群 |
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※1: IEA (国際エネルギー機関) 「World Energy Outlook 2022」より参照
https://www.iea.org/reports/world-energy-outlook-2022
※2: IPCC 「AR5」「AR6」より参照
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/
https://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th
※3: 日本の気候変動予測については、文部科学省、気象庁 「日本の気候変動 2020」より参照
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/index.html
1.5℃シナリオ
現行推移シナリオ
影響評価と対応戦略
1. 炭素税導入の影響評価 【リスク】
1-1) 炭素税導入による事業コストの増加
パリ協定の達成に向け、日本においても2030年度の温室効果ガス46%削減、2050年のカーボンニュートラル実現という国際公約を掲げ、これらの目標を達成するため「GX実現に向けた基本方針」が発表されました。この中で、炭素に対する賦課金の導入が発表されており、今後課税対象の拡大や負担水準の引き上げの可能性が考えられます。
1-2) 財務上の影響額
炭素税の影響額を試算した結果、1.5℃シナリオでは2030年に3.0億円、2050年に5.4億円、現行推移シナリオでは、2030年に1.9億円、2050年に2.4億円に達することが予測され、これはそのまま運営コストの増加につながります。
<1>重要なパラメータ(指標): 2030年・2050年時点の財務影響(年額)
シナリオ | 1.5℃シナリオ | 現行推移シナリオ | |||
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年 | 2030 | 2050 | 2030 | 2050 | |
CO₂排出量を削減しなかった場合 | 炭素税額(億円) | 3.0 | 5.4 | 1.9 | 2.4 |
目標通りCO₂排出量を削減した場合 | 炭素税額(億円) | 1.7 | 3.1 | 1.1 | 1.4 |
差額 | 節税額(億円) | 1.3 | 2.3 | 0.8 | 1.0 |
炭素税価格($ ・ t-CO₂あたり) | 140 | 250 | 90 | 113 |
(前提条件)
- 炭素税価格は、IEA WEO2022によるNZEのネットゼロ宣言国、およびSTEPSのEU設定価格で試算。
- 計算式: 炭素税額 = 2022年3月期 Scope1,2排出量×炭素税価格×為替(1$=130円換算)
1-3) 対応戦略
・オンサイトの再生可能エネルギー(太陽光発電)導入の推進
炭素税の影響評価を実施した結果、USSが掲げる排出量削減目標を達成できるだけでなく、将来的に大きな節税効果を得ることができるオンサイトの再生可能エネルギー導入を推進することを決定しております。今後も、グループ全体で最も効果の高い施策を立案し、スピーディに成果を生み出していきます。
<2>太陽光発電設備導入状況一覧
第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | |||||||
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会場名 | R名古屋 | 名古屋 | 静岡 | JAA | 岡山 | 埼玉 | 神戸 | 東京 | 横浜 |
稼働開始 | 2023年1月 | 2023年2月 | 2023年7月 | 2023年8月 | 2023年10月 | 2024年1月 | 導入決定 |
2. 世界的なEV化の拡大に関する影響評価 【リスク・機会】
2-1) EV化の拡大に対する当社の予測
サーキュラーエコノミーの進展により、シェアリングサービスが普及し、EVを購入して保有する人が減った場合、またはEV製造メーカーが、自身のサプライチェーン内でEV流通の囲い込みを行った場合、当社オークションへの出品台数が減少する可能性があります。しかしながら、USSは、2030年時点におけるグローバルの乗用車販売台数を下図のように推定しており、1.5℃シナリオにおいて、乗用車全体の販売台数は2020年と比べて大きく伸びるものと予測されます。こうした場合、EV製造メーカーのサプライチェーンだけでは、中古車の流通機能を担えない可能性が高く、脱炭素化に向けたBEVの普及によって、買い替え需要が加速し、当社のオートオークション事業に好影響をもたらすと予想します。
2-2) 対応戦略
・オークション出品におけるEVの取扱い体制の強化
今後、オークション出品車両におけるEVの取扱いが増えることを踏まえ、EVの評価基準や車両検査体制などの確立に向けた研究開発、EVコーナーの拡充などの集荷営業施策の実施、EV用充電設備の拡充などを積極的に進めてまいります。
・オークション出品時の出品票のデジタル化の拡大
今後のEVへの買い替え需要に伴うオークション出品台数の増加に備え、従来、出品者が手書きで作成した出品票をシステム上で入力・作成できる仕組みを構築しました。入力工程の大幅な削減により、業務の効率化が可能となっており、今後もデジタル出品比率の向上を進めてまいります。
・公正・公平な取引と資源循環のためのスキームを創造し続けるための事業ポートフォリオの拡充
オークションに続く次の柱となる事業を生み出すために、リサイクル事業の拡大やオークション周辺事業の創出に取り組み、長期的な視点で事業ポートフォリオの拡充を図ります。具体的には、設備・プラント解体事業を展開する株式会社SMARTのリサイクル事業を拡大し、循環型社会への貢献を進めていきます。また、当社が保有しているオークション車両・落札データ(ビッグデータ)の有効活用を行うとともに、フィンテックを活用したオートローン事業をはじめとするオークション周辺事業についても、積極的に創出・育成も進めていき、新たな事業領域へのチャレンジも行っていきます。
(前提条件)
- 参照データは以下のとおり。
IEA Global EV Outlook 2022
https://www.iea.org/reports/global-ev-outlook-2022
Global EV Data Explorer
https://www.iea.org/articles/global-ev-data-explorer - 1.5℃シナリオについては、IEA STEPS(公表政策シナリオ) と販売台数合計が同じになるという前提のもと、IEA NZE(ネットゼロシナリオ)のEV販売シェアを元に算出。
- 2025年および2030年以外の将来数値については、均等に変動する前提で算出。
第三者保証
独立した第三者保証報告書
当社グループでは、信頼性の高いデータの情報開示が必要であると考え、GHG排出量(Scope1・2・3)について第三者検証を受け、保証報告書を取得しております。
気候変動に関するその他のデータ
バリューチェーンを通じたCO₂排出量
区分 | 算定対象 | 排出量(t-CO₂) | |||||
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2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |||||
自社の排出 | 直接排出(スコープ1) | 化石燃料の使用 | 4,500 | 4,138 | 3,966 | ||
間接排出(スコープ2) ※マーケット基準 |
購入した電力・熱の使用 | 12,338 | 12,597 | 11,737 | |||
合計 スコープ1、2 | 16,838 | 16,735 | 15,703 | ||||
上流および下流での排出 | その他の 間接排出 (スコープ3) |
カテゴリー | 1 | 購入した製品・サービスの資源採取、製造、輸送 | 59,257 | 68,565 | 73,520 |
2 | 購入した設備などの資本財の製造、輸送 | 13,782 | 17,654 | 13,502 | |||
3 | 購入した燃料・エネルギーの資源採取、製造、輸送 | 2,861 | 2,727 | 2,562 | |||
4 | 輸送・配送(上流) | 8,863 | 6,248 | 6,648 | |||
5 | 拠点から排出した廃棄物の処理 | 2,122 | 3,149 | 5,515 | |||
6 | 従業員の出張 | 147 | 166 | 146 | |||
7 | 雇用者の通勤 | 1,866 | 1,605 | 1,722 | |||
8 | 賃借したリース資産の運用 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | |||
9 | 輸送・配送(下流) | 3,752 | 2,838 | 3,531 | |||
10 | 中間製品の加工 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | |||
11 | 販売した製品の使用 | 144,129 | 149,778 | 154,731 | |||
12 | 販売した製品の廃棄時の処理 | 2,051 | 1,609 | 1,370 | |||
13 | 賃借するリース資産の運用 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | |||
14 | フランチャイズの運用 | 2,315 | 2,030 | 2,101 | |||
15 | 投資の運用 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | |||
合計 スコープ3 | 241,146 | 256,369 | 265,347 | ||||
合計 スコープ1、2、3 | 257,984 | 273,104 | 281,050 |
注1.CO₂排出量は、USSグループ全拠点(100%)を対象としています。
注2. 各数値の四捨五入により、各数値を合計した値と合計値に差異が生じる場合があります。
注3. 「対象外」のCO₂排出量は0に相当します。
エネルギー使用量
範囲:USSグループ全拠点(100%)
エネルギー | 単位 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|
ガソリン | kl | 582 | 585 | 564 |
軽油 | kl | 743 | 617 | 572 |
灯油 | kl | 107 | 79 | 80 |
液化石油ガス(LPG) | t | 260 | 268 | 262 |
都市ガス | 千Nm3 | 82 | 84 | 89 |
電力(非再生可能エネルギー) | MWh | 28,837 | 27,560 | 25,587 |
電力(再生可能エネルギー) | MWh | - | - | 1,445 |
合計 | MWh | 48,001 | 45,278 | 44,056 |
エネルギー消費削減に対する外部評価
当社は、2017年度~2022年度の5年連続で、省エネ政策の事業者クラス分け制度における省エネが優良な事業者(Sクラス)と評価されました。この制度は、経済産業省が省エネ法の定期報告を提出する全ての事業者をS・A・B・Cの4段階へクラス分けするものです。今後も継続的に優良事業者を維持していけるよう様々な省エネ活動をしていきます。※事業者クラス分け制度について(経済産業省資源エネルギー庁HP)