社外取締役座談会
持続的な成長を後押しするサポートを行い企業価値の向上へとつなげていきます。
USSは、社外取締役の意見を積極的に取り入れながら、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでいます。これまで社外取締役3名は、取締役会などを通じてさまざまな提言を行ってきました。それらに対してどのような成果が得られたかを振り返りながら、今後の展望を語り合いました。
成長戦略に関する提言と成果
オートオークションの市場シェア「50%」の実現に向けた戦略について
髙木 2023年度には、オートオークションの市場シェア50%の達成に向けた成長戦略を明確にしました。3か年で200億円の成長投資を行っていくという方針を打ち出したことは大きな意義があると感じています。当社には潤沢な資金がありますが、大きな投資が必要なビジネスモデルではないこともあり、かねてからその活用方法を検討してきました。
今回、具体的な方針として打ち出すことができました。
また、こうした中長期戦略を開示する必要性について、これまで社外取締役から提言を行ってきたこともあり、一歩踏み出すことができたと言えます。すでに40%の市場シェアを有している当社がさらにシェアを拡大することは並大抵の取り組みでは難しく、買収などをせず実現を目指すとなればなおさらです。今後も、成長戦略の進捗をしっかりとモニタリングしていきたいと思います。

本田 今、あらゆる企業に後継者の問題が突きつけられています。強いリーダーシップを発揮していた経営者が退いた後、後継者がそのまま同じやり方で会社経営をし続けるのは難しいでしょう。当社においても後継者をどのように育成していくかが重要な課題の一つとなっています。そこで、中長期戦略に関する施策を検討するプロジェクトを次世代マネジメント層の育成機会と位置づけることとしました。プロジェクトメンバーに会場長や本社の部長クラスをアサインすることで、サクセッションプランにつなげていけるのではないかと考えています。
今後、メンバーからの中間報告を受けて私たちの考えを述べ、これを踏まえて具体的な施策が行われていきます。その進捗を確認し、社外の視点から適切な助言をし続けていきます。
笹尾 次世代マネジメント層の育成には、経営リテラシーの習得だけではなく、経営幹部が現場の次期リーダーたちと一緒になって経営課題解決のサイクルを回しながら経営者としての経験を積んでいくことが重要です。こうした取り組みが計画どおり進んでいけば、組織全体が変わっていくでしょう。2023年度には、社外取締役と経営幹部の個別面談を行ったのですが、その時点ですでに、いろいろと良い意見が出ており、楽しみです。
また、当社グループは従来、グループ各社の裁量に任せる領域が大きくなっていました。しかし最近では、リサイクル事業の株式会社アビヅ、株式会社SMARTの事業計画を取締役会で共有いただき、私たちがモニタリングするような体制ができつつあります。
リサイクル事業は市場の機会をうまく捉えてパートナーを見つけ、スピーディーに事業を立ち上げてきたこともあり、比較的どんどん新しいことに挑戦していく風潮があります。一方、オークション事業は安定的で、地道に日々のオークション業務を行っていくことが重視されてきました。
しかし、今後、飛躍的な成長を実現していくためには、各事業の経営幹部候補たちのマインドチェンジも必要になっていくと考えています。
キャッシュアロケーションに関する提言と成果
市場の期待をしっかりと踏まえて、総還元性向80%を実現していく
髙木 当社は2024年度から2026年度の3か年における、新たなキャッシュアロケーションの方針を策定しました。これにより、3か年で200億円の成長投資を実施し、その余剰金を還元していくという方針が明確になりました。
株主還元に関する方針は、株主や機関投資家がどのような意見を持っているかきちんと把握したうえで、それを踏まえた内容にしなければなりません。そうした視点から原案を確認し、総還元性向80%という、市場の期待にしっかり応えていると言えるレベルの目標を策定できたと考えています。
ESG戦略への提言と成果
人的資本の強化と、多様な人材が活躍できる環境づくり
笹尾 ESGに関する取り組みとして当社が最も注力しているのは人的資本の強化です。私は社内の意識改革を図るべく、2023年度に会場長などの管理職層を中心として、ESG、DE&I※、女性活躍推進に関する研修を3回にわたり実施しました。研修後、会場長が管理職ミーティングに女性社員を参加させるなど、仕事の領域の拡大や難易度の高い仕事付与等、人材育成の面で必要なサポートをするようになった会場があるなどの成果がありました。
2024年4月には、意欲ある2名の女性社員が管理職になりました。女性管理職がいなかった状況から、少しずつですが変わりつつあると感じています。また、検査員の早期育成制度により、若手社員の育成に関する取り組みも始まっています。これらも含めて取り組んでいけば、会社全体の成長につながっていくのではないかと考えています。

髙木 DE&Iに関しては、多様な考え方を社内に取り入れるという面でも重要ですよね。既存事業で長年培ってきた知識やノウハウを有している企業では、経営者が意識しなければ、どうしても新しい考えを取り入れづらくなる傾向があります。だからこそ、女性社員や若手社員など多様な人材が活躍できる環境を整備していく必要があるのではないでしょうか。
※ ダイバーシティ:多様性、エクイティ:公平・公正性、インクルージョン:包摂性の略。性別や年齢、出身地や価値観などが異なる多様な人材を受け入れ、公平に処遇するだけでなく、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境づくりにも取り組むこと。
気候変動関連への積極的な取り組みを提案
本田 気候変動関連の取り組みに関しても、この2年間で目に見えて前進したと評価しています。私は環境戦略を含む中長期成長戦略策定の経験があるので、取締役会で気候変動関連の取り組みの重要性を強調してきました。当社事務局は知識習得スピードが著しく、彼らと並走しながらTCFD提言への対応やSBT認証の取得など、一歩ずつ取り組みを前に進めてきました。
社会全体で地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えることを目指し気候変動への対応を進めていく中で、当社も中長期的な視点で取り組みを進めることができたのは、非常に大きな意義があります。気候変動関連への取り組みにより社外からの評価ランキングも上がるなど、当社の世の中におけるレピュテーションと企業価値向上に貢献できたと考えています。

企業価値向上に向けたさらなる提言
各取り組みにおいて成果を出せるようサポートすることで、持続的な成長へとつなげる
本田 明快な中長期成長戦略を策定し、戦略ストーリーと施策の具体性が社外の目から見ても客観的に納得できることが重要であると考えています。そして戦略を着実に実行していくことにより、成果を挙げ、顧客・従業員・株主をはじめとするすべてのステークホルダーに貢献していかなければなりません。
これからも一つずつ具体的な成果を出せるように私たちがサポートすることを通じて、当社の企業価値向上と持続的な成長につなげていきたいと思っています。
笹尾 当社には、「会社を良くしたい」という思いを持つ従業員が多くいて、それが大きな強みとなっています。また、取締役会で提案し続けると確実に良い方向へと変わっていくと感じています。例えば、会場長会議の議事録をいつも回覧してもらっているのですが、そこで提起されている取り組みが半年後や1年後には形になり始めていることも多いです。
髙木 実際の現場で、さまざまなアイデアを持った人材をどのように活かしていくのか。経営視点を持った人材をどのようなキャリアプランで育成していくのか。これらは最も重要な経営課題の一つだと思います。独立役員のチームとしての推進力をさらに高めるべく、独立役員のまとめ役として、こうした課題への取り組みに関する提言・モニタリングをリードし、長期的な企業価値につなげていきたいと思います。